クンタの軽井沢日記


これは一部事実にもとづいた
フィクションです

(2005年7月)


ぼくは機嫌の悪いトナカイさんだぞー

妖 精

今日のお散歩は早いぞ。まだ朝の6時だよ。
クンパパがゴルフに行くからってぼくはまだ眠かったけどお外に引っ張り出された。
「今日のお散歩はショートコースね」だって。
ぼくのお散歩コースにはいくつか種類がある。
ロングコースはクンパパがヒマな時のコースでお家から新幹線の側道沿いに
湯川のふるさと公園までの往復1時間30分ぐらい。ツルヤの裏を廻ることもあるよ。
ショートコースはクンパパがゴルフ、テニス、それにちょっとお仕事の時のコース。
別荘の林の中をぐるりと一回りしたり、植木屋さんの木が一杯植わっている畑を
通ったり、小学校の裏を歩いたりする40分ぐらいコース。

クンパパとぼくは軽井沢に来てから一日も欠かさず雨の日も雪の日も夏の炎天下も
歩き続けているんだ。
夏は暑さにバテバテでクンママに車で迎えに来てもらったことも何度かあるよ。

さて、おしっこ伝言嗅ぎ嗅ぎのぼくはクンパパの「はよ歩け!」の声も無視して、
別荘地の林の中をのそのそ歩く。
ど〜せショートコースさ、ゆっくり時間を稼いでやる。
うんPもまだしてやらない。
あれれ、そんなこと言っていたら霧が出てきちゃった。
でももうすぐお家だよ。

「クンタ!あれ!」クンパパの緊張した声がする。
なんだなんだ、きれーなおねえさんでもいたか?
クンパパの眼の先を見ると「鹿くんだ!」
霧の中に一頭の鹿くんが道の真ん中に立ってこっちをじっと見ていた。
だって別荘地の中だよ、ここは。
北には18号線としなの鉄道の線路。南には新幹線(高架だけど)と18号線のバイパス。
そんなところに鹿くんがいるなんて。
長く感じたけどその間5秒ぐらい。
鹿くんは道の反対側の別荘の生垣の中に飛び込んで姿が見えなくなちゃった。
「クンタ、今、音、なんにもしなかったね」
鹿くんが飛び込んだはずなのにガサッともバサッとも音がしなかった。
走ってゆく足音も。
「今のは木の妖精かもしれないね」
「宅地開発でみんな木を切っちゃうから、もう切らないでって、出て来たのかもしれないよ」
クンパパはミョーにロマンチストだ。
でも、ぼくとクンパパを見ていた鹿くんの眼はとても優しかったよ。


     「この前は馬(ポニー)さん、今度は鹿くんね。やっぱり」  byクンママ

 
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