クンタの軽井沢日記


これは一部事実にもとづいた
フィクションです

(2005年5月)


「もしもーし、マー婆さま?」

化け猫(マー婆さまありがとう)

クンママのお母さん(以降、クンママ母)からお電話があった。
「ねえ、ちょっと聞いてよ。マーちゃんのこと」

昨晩、23歳のマー婆さまが突然死んじゃったそうです?
クンママ母は小さなダンボール箱にマー婆さまの遺体を入れて
タオルのお布団をかけてあげてお線香をたいて、「マーちゃん寂しいよ」
って夜遅くまで目を真っ赤にして泣きました。
明日の朝、動物の葬儀屋さんに来てもらってお骨にしましょうって
その晩は泣きながら寝ました。
翌朝、クンママ母はベッドからは起き上がって「お線香を上げなくちゃ」と
マー婆さまの入っている箱の置いてある部屋に行きました。

「マッ、マーちゃん!」
なんとマー婆さまが箱の横にちょこんと座って自分の手を舐めているでは
ありませんか。
クンママ母は驚くやら嬉しいやら、「良かった、良かった、生きていたのね」
マー婆さまに頬擦りしました。
「うっとうしいんだよ。ミルク早くおくれでないかい」とマー婆さま。

「でもねー、呼吸も止まってピクリとも動かなくなっていたのに」
「私、なんか気味悪くなっちゃったわ」
大抵のことには動じない戦争経験派のクンママ母でしたが、それからは
マー婆さまを見る目が変わってしまったようです。
「あの仔、仙ネコじゃなくて本当は化けネコよ」
「いつまで生きるつもりかしら」だってさ。

でもこの事件の後、あんなにお風呂嫌いだったマー婆さまが
「きれいにしてよ」ってよって来るようになったんだって。
「それまで嫌がって咬んだり引掻いたりするマーちゃんが大人しく
お風呂でされるがままなのよ」
「そう、もう永いことないかもね」とクンママ
「なんかいじらしくなちゃってね」とクンママ母。

ところがどっこい、マー婆さまクンママ母の牛乳を毎日一瓶ぺろっと飲んで、
食事もパクパク食べてます。
「やっぱりあの仔は化け猫ね」「うんうん」
クンママとクンママ母はうなづきあっています。

「クンママの家系はやっぱり魔女。飼っている猫も化けネコだ。ぶるぶる」 byクンパパ

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マー婆さま「実はちょっとエン魔さまに会ってきただけよ」
クンタ  「でも、クンママ母がびっくりするでしょ」
マー婆さま「ふんっ、たまには刺激もいいものさ」
クンタ  「そっそーゆーものですか?」
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マー婆さまありがとう、そしてサヨウナラ。


まだまだ元気でクンママ母をハラハラさせてくれるはずのマー婆さまでしたが、
昨日、23年の長い猫生をクンママ母に看取られて静かに閉じました。
原稿を暖めすぎていたクンパパは反省しきり。
クンママとクンママ母は泣いています。
マー婆さまを暖かく応援してくれた皆さま、ありがとうございました。
マー婆さま、サヨウナラ

 
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