クンタの軽井沢日記

特別編

これは一部事実にもとづいた
フィクションです


病院でのナナ母さん
傷は治りきらないけど仔犬たちにオッパイをやる
(野犬時代)
   シンガポールの犬(その二)

何か聞こえた・・・。
人間の叫ぶ声?
流れ出た血でかすむナナ母さんの目が何かを振り回し、大声で叫びながら
近づいて来る人間を見た。
ウララコさんのご主人だ!
この広場を見下ろす32階建ての高層マンションの26階に住んでいて、
いつもナナ母さんや群れの犬たちに食べ物を持ってきてくれるウララコさん
という日本人の奥さんがいる。
ウララコさんは広場の犬たちに食べ物をくれるばかりでなく、仔犬が生まれる
と里親を探してくれたり、避妊手術を受けさせてくれたり、事故で傷ついた犬
を動物病院に連れて行って手当てしてくれたりする人だった。
いまそのウララコさんのご主人が「◎△◇☆ー○!」って、何か大声で
叫びながら駆けてきて、タイヤの切れはしを振り回して野犬たちの群れを
追い散らしてくれている。
それを見ながらナナ母さんの意識は薄れていった・・・。

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「そう、ぼくがそこに行き着いたときには、血だらけの赤い肉の塊が
あるだけのように見えました」
ウララコさんのご主人がクンパパに話します。
「夜中に断末魔のような、異様な犬の鳴き声で目が醒めて駆けつけた
んです」
「ぼくだって野犬の群れは怖いから必死でしたよ」
「何も武器になりそうなものがなかったので道に落ちていたタイヤの
切れ端を拾って振り回しながら行ったんです」
「肉の塊が、まえから餌をやっていた雌犬だとわかったときは大声で
26階のウララコを呼びました」
ウララコさんは夜中に知り合いの獣医さんをたたき起こし、毛布に包んだ、
赤いボロ雑巾のようになったナナ母さんの手当てを頼みました。
「今夜がヤマですね」「あとはこの子の体力次第ですよ」
獣医さんはそう言いました。
全身に数十ヶ所の咬み傷を負ったナナ母さんでしたが、ウララコさんと
ご主人の手厚い看護の結果、奇跡的な回復をしたのでした。

藪の中に残された仔犬たちはどうしたかって?
翌日の朝早く、ウララコさんとご主人で母犬を探して鳴いている仔犬たち
6頭全部を救出してきましたからご安心ください。
そして今は6頭の仔犬たちも里親にもらわれて幸せに暮らしています。
この事件のあと、ナナ母さんは息仔のランくんとウララコさんのうちの仔
になり、軽井沢にやってきました。
「ナナ」という名前はまだ野犬だったとき、ウララコさんが呼んでいた
「ママ」からつけたそうです。

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ナナちゃん、ランくん、シンガポールでの野犬時代から波乱万丈の
犬生だね。スゴイなー。
ぼくもクンパパとクンママに会わなかったら、ペットショップで大きく
なりすぎて、実験動物になっていたかもしれない。
そう思うとお互いに今はとっても幸せだね。
                             byクンタ

      このお話はナナママ、ナナパパがシンガポールで
        実際に遭遇した事件をもとにしました。

        ナナママたちは今でもかわいそうな犬たちや動物を
        少しでも良い環境に暮らせるようにしようと努力なさっています。


 
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