クンタの軽井沢日記

これは一部事実にもとづいた
フィクションです


(その6)
     軽井沢の町花「桜草」だよ
  小鳥さんの巣は純毛さ

5月は茶色と灰色で寒々しかった林の木々がなぜかうす緑色に変わってくるんだ。
キジ太郎夫婦の声がうるさいし、小鳥さんたちも嬉しそうにさえずっている。
ぼくもなんかウキウキしちゃうな。
ぼくの抜け毛もひどくなったってクンママがこぼしてた。
フン、クンパパの後頭部ほどじゃないよ。

窓に薄くなってきた頭を映していたクンパパが「ギャー、カッワイー」と吠えた。
小さな黄色い足の小鳥さんがベランダに落ちていたぼくの抜け毛をくちばしで集めて
どこかへ飛んでったって。
「あれはきっと巣作りしているんだよ」
「純毛の布団にくるまってきっとヒナたちは暖かいわよ」
ぼくの抜け毛も役に立つとはまんざらでもない。

「オイ、小鳥の巣がわかったぞ。お隣さんの郵便受けの中だ」
お隣はぼくにいつも優しくしてくれる若夫婦で、郵便受けは奥さんのおじいちゃんが
カワイイ孫娘のために何日もかかって30センチもある太い木をくりぬいて作って
あげたものでした。

それからお隣の郵便受けに
”小鳥が巣をつくっていますので、郵便物は入れないでください”
って書いた小さな紙が貼ってありました。



    
−その7へつづく−


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